多年草の食虫植物ムシトリスミレとは?特徴や育て方など詳しく紹介!

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様々な園芸種の植物がある中でも、食虫植物を育てているという人は少ないのではないでしょうか?

ムシトリスミレは、食虫植物でありながら開花期になると綺麗な花を咲かせるので観賞用としても非常に優秀な植物です。今回は、そんなムシトリスミレの育て方をご紹介します。

目次

ムシトリスミレ(虫取り菫)とは

まずは、ムシトリスミレがどのような植物なのかをご紹介していきます。ムシトリスミレの基本情報や性質を事前に調べると栽培も成功しやすくなります。

ムシトリスミレの基本データ

ムシトリスミレは、世界中に分布している食虫植物です。食虫植物と言えば独特の形状をしている物を想像しがちですがムシトリスミレは綺麗な菫に似た花を咲かせます。観賞用ということもあり、美しい見た目をしていますが食虫植物としての機能も備えています。

葉には小さな毛が密集しており、葉の表面を薄く粘液で多うことで葉に止まった虫を捕獲します。粘液がこぼれないように葉の縁が反っているのが特徴です。種類によって栽培時の扱い方が違い、寒さに強い北米産とデリケートなメキシコ産の2種類に大別できます。

ムシトリスミレの特徴

ムシトリスミレから分泌される粘性の液体は消化酵素を含んでいるので虫を捉えるだけでなく消化する働きも持っています。また、ムシトリスミレの種類ごとに適した生育方法も違ってきますので栽培の際は事前情報を調べておくことが大切です。

成長型で分けると冬芽を形成することで越冬する寒地型・北米原産の暖地性・メキシコ原産の熱帯高山性の3つにムシトリスミレを大分できます。日本では寒地性のコウシンソウがムシトリスミレの仲間で有名ですが、暑さに弱いため市場ではあまり見かけません。

 花の特徴

ムシトリスミレの開花期は2月~6月です。ムシトリスミレはその名前の通りスミレに似た可愛らしい花を咲かせます。ムシトリスミレの花びらは合着しており、5㎝~15㎝の花茎を伸ばした後、先端が徐々に曲がって先端に下向きに咲く花を付けます。

名前がムシトリスミレなので勘違いする人が多いですが、ムシトリスミレはスミレとは全く別の植物です。しかし、全く別の種類にもかかわらず酷似した花になるというのも、ある意味珍しい植物と言えるでしょう。花色は白・ピンク・黄・紫と種類ごとに様々です。

 葉の特徴

ムシトリスミレは株元にいくつもの葉を形成し、ロゼット状に成長していきます。楕円形で長さ3㎝~5㎝の葉を付ける品種が有名ですが、品種によって葉の形状が微妙に違うのが特徴です。葉の表面からは虫を捕らえるための粘液が分泌されており小ハエなどを捕食します。

虫の捕まえ方は、食虫植物で有名なモウセンゴケと似た方法とも言えるでしょう。また、葉の縁が粘液や捕らえた虫が落ちないように反り返った形状をしています。ムシトリスミレの葉で捕らえた虫は消化され土壌の足りない栄養素を補う為に吸収されます。

ムシトリスミレは食虫植物

ムシトリスミレが虫を捕獲する原理はいたって簡単です。上記でも紹介した通り葉の表面から粘液を分泌して葉に止まった虫を捕獲します。ムシトリスミレの葉を顕微鏡で見ると、虫取りに使用する粘液を分泌する有柄腺と虫を消化する酵素を分泌する無柄腺が見られます。

粘着性はかなり高いようで、コバエ以外に大き目のガガンボも捕獲できる高い粘着性を持っています。サイズの小さい虫にとっては致命的なトラップです。因みに消化酵素を分泌する無柄腺は虫が引っ付いた時しか使用しないことで効率良く虫を養分にします。

ムシトリスミレの花言葉

ムシトリスミレの花言葉は「幸福を告げる」と「欺きの香り」の2つです。「幸福を告げる」はムシトリスミレの花の美しさから付けられた花言葉と思えば納得がいきます。

虫を捕らえるために進化した食虫植物の中でも美しさを併せ持つムシトリスミレにはうってつけの花言葉でしょう。もう1つの「欺きの香り」は良い香りに誘われてやってきた虫がムシトリスミレに捕まる様子から付けられた花言葉です。

若干サスペンスめいた花言葉ですが、食虫植物であるムシトリスミレにはこちらの方がしっくりくるという声も多く見受けられます。

ムシトリスミレの種類

次は、ムシトリスミレの種類を見ていきましょう!ムシトリスミレに属している植物は世界に80種類存在していると言われています。今回は日本で良く流通しているムシトリスミレの人気品種を3種類をご紹介していきます。

ムシトリスミレの種類ごとに育てる環境や冬越し夏越しの方法が違ってきますのでそれぞれ適切な環境で育てるように注意が必要です。適切な栽培方法を把握して、ムシトリスミレを美しく育てあげましょう!

種類①アシナガムシトリスミレ

アシナガムシトリスミレは、ムシトリスミレの中でも最もポピュラーな種類です。元々砂漠に自生していた多肉植物でもあるので乾燥にも強い食虫植物です。高く花茎を伸ばして赤紫色の花を咲かせる姿が特徴的で、園芸品種としても人気があります。

耐暑性は高い物の耐寒性は弱く、5度以下になると株が枯れてしまう恐れが出てきます。開花期は冬~春と幅広く、地域の気候によっても変わってきますが寒さが厳しい場所では屋内で育てたほうが安心して育てられます。

種類②ヒメアシナガムシトリスミレ

ヒメアシナガムシトリスミレは、熱帯高山性の品種でピンク色の花を咲かせる品種です。直径2㎝程度の小さいサイズの株で松ぼっくりのよいな可愛らしい形状をしています。花茎は他の品種と比べて短めで開花時もコンパクトにまとまる品種です。

こちらも多肉植物なので乾燥に強い品種で、余り水やりの頻度も多くないので初心者や水やりを忘れがちな人でも育てることができます。株が全体的に小さいことがこの品種の特徴です。小さいので部屋で育てるのも簡単で室内栽培に向いています。

種類③ピンギキュラ エッセリアナ

ピンギキュラ エッセリアナは薄紫と白色の花色が非常に美しい品種です。形状だけでなく色合いまでスミレに似た花を咲かせるので、何も知らない人が見るとスミレの一種に見間違えてしまうでしょう。熱帯高山性の品種は、寒さに少し弱い性質を持っています。

冬の栽培は注意して行いましょう。葉の形状が丸っこくやわらかな印象を与える株姿が特徴的です。形状的に葉の付け根に水が溜まりやすいので腰水栽培がおすすめです。半日蔭を好んで育ち、直射日光に当てると葉焼けを起こしてしまいます。

ムシトリスミレの育て方

次はムシトリスミレの育て方をご紹介していきます。最初に育てる環境や土壌を知っていきましょう。環境や土壌を間違えると丁寧に栽培しても病害虫にかかりやすかったり、枯れてしまう事もあります。適切な環境づくりは植物の栽培で一番重要なことです。

育て方①環境

暖地性のムシトリスミレは、日当たりと風通しが良い環境に適しています。耐寒性はそこそこ強く、地面が霜で氷る程度の地域では屋外で越冬が可能です。熱帯産の品種は、風通しが良い半日蔭の環境で育てるのに適しています。

湿気に弱いので風通しが悪い場所は避けて育てましょう。最後に北米産のムシトリスミレは、耐寒性が弱いので冬に気温が10度を下回る地域では屋内の暖房が当たらない場所で栽培して冬を越しましょう。10月末頃の速めの時期に室内に取り込んでおくと安心です。

育て方②用土

ムシトリスミレは、養分が少なく水はけの良い土壌を好むので、ミズゴケのみまたは川砂・ピートモス・鹿沼土をブレンドした用土を使用します。用土の調合をしたことがない人は、多肉植物用の用土や山野草用の土を使用しても適した土壌環境を作ることができます。

育て方③植え付け

根の成長が止まっている真冬から春の期間が植え付けの適期です。植え付け用のミズゴケや上記で紹介した用土をブレンドした培地に植え付けましょう。ムシトリスミレは葉の表面がべたついているので植え付ける際に葉に土が付くとなかなか取れません。

葉が土で汚れると上手く光合成できなくなるリスクがあるので葉が汚れないように注意して植え付けましょう。また、素手で植え付けると単純に手がべたついてしまうので、ゴム手袋を使用して植え付けるようにすると植え付け後が楽です。

ムシトリスミレの育て方【日頃のお世話】

次は、ムシトリスミレを育てる上での日頃の手入れ方法をご紹介していきます。特にムシトリスミレの成長型によって水やりや肥料の頻度が違ってきますので、自分の育てている成長型に合った頻度で水を与える必要があります。

日頃のお世話①水やり

暖地性のムシトリスミレは培地が常に湿っている状態を好みます。培地が乾燥しそうになったら水を与えましょう。小まめな水やりが必要になってくるので忙しくてあまり水を与えるタイミングがないという人にはあまりおすすめできません。

一方で熱帯高山性のムシトリスミレは葉に水がかかると非常に腐りやすいです。上から水を与えると株に水がかかる恐れがあるので受け皿に水を入れ、その上に鉢を置いて水を吸わせます。ずっと吸わせるのではなく、水に浸けてある程度時間がたったら水から上げます。

日頃のお世話②肥料

ムシトリスミレには肥料は必要ありません。多肉植物なので葉の中に株が成長するのに必要な養分が蓄えられています。逆に肥料を与えるとムシトリスミレの根が肥料焼けをおこして枯らしてしまうのでくれぐれも与えないようにしましょう。

また、食虫植物というものの虫を人工的に与える必要もありません。こちらもあまり虫のサイズが大きいと吸収しきれない部分から腐ってしまいます。虫嫌いの人からすると処理も結構大変なので虫は自然に捕まったものだけで十分です。

日頃のお世話③病害虫

ムシトリスミレがかかる病気は特にありません。強いて言えば根腐れに注意しましょう。風通しが悪い・水の与えすぎの2つに注意すると根腐れをおこすリスクを大きく減らすことができます。一方で害虫ではナメクジに注意が必要となります。

ナメクジは梅雨の湿気が多く気温が高い時期に活発に活動し、食害をおこします。食べられたムシトリスミレの葉はそこから腐ってしまうので見つけたら直ぐに捕殺しましょう。また、湿気が溜まりにくい環境で育てることもナメクジ予防では大切なことです。

ムシトリスミレの育て方【増やし方】

次は、ムシトリスミレの増やし方をご紹介していきます。ムシトリスミレを増やすには複数の方法があります。葉挿しは株の数を一気に増やせますが成長しきるまで、ある程度時間がかかります。株分けは元の株と同じ大きさの物を分けれますが、あまり株数は増やせません。

種まきでは、葉挿しよりも多くの株を増やすことができますが、発芽するまでの管理が少し難しく初心者がやる方法としてはおすすめできません。ある程度多肉植物の扱いに慣れている人向きの増やし方です。自分に合った方法でムシトリスミレを増やしましょう!

増やし方①葉挿し

ムシトリスミレを多く増やせて、尚且つ初心者でも比較的簡単に増やせる方法が葉挿しです。また、葉挿しの適期は12月~3月と非常に幅広いので気軽に行えますが、葉の厚みが増す冬に行うと成功率が上がります。まず、ムシトリスミレの葉を基部から手で外します。

外したムシトリスミレの葉は、湿らせたミズゴケに置き、葉挿したミズゴケごと明るい日陰で管理しましょう。葉挿しした胚が発根したら1つ1つ鉢植えに植え付けていきましょう。取れる葉の数によってはかなりの株数を作ることができます。

増やし方②株分け

次に紹介するのは株分けです。株分けのメリットは元の株と成長の度合いが大差ない株を増やせることです。植え替えを行う際に株が大きくなっていたら株分けが行えます。また、ムシトリスミレの増やし方の中でも比較的難易度が低い方法なので初心者におすすめです。

まず、株分けした株を鉢から掘り上げます。次に、掘り上げた鉢を適当な大きさに手で分けましょう。この際、あまり小さく分けすぎると失敗してしまうことがあるので注意です。ムシトリスミレの株分けは、温かくなり始める2月~5月が適期となっています。

増やし方③種まき

ムシトリスミレは、スミレに似た花を咲かせた後に種をつけます。ムシトリスミレの種は市販で出回っていないので元々育てていた株から採取するしか入手方法はありません。ムシトリスミレの株から採取した種は、すぐに植え付けましょう。

採取して直ぐに種を蒔けば、適期に種まきができます。種まきから発芽までは1ヶ月~2ヶ月かかるので気長に管理して待ちましょう。種は培地を常に湿らせた状態で明るい日陰で管理します。ミズゴケを使用すると培地が乾きにくく水やりの手間を削減することも可能です。

発芽してからは成長型に合った環境と水やりの頻度で育てていきます。発芽苗が株に成長するまでは凡そ3年~4年かかると言われています。その為、種まきで増やす方法は少し難易度が高くちゃんとした株にまで育てる根気が必要な方法であることを知っておいて下さい。

興味深い食虫植物を育ててみよう!

今回は、ムシトリスミレを育てる方法をご紹介しました。多肉植物で食虫植物と言う何とも面白い組み合わせのムシトリスミレ。品種によって育て方が違ったりと多少難易度は高めですが、コツさえ掴めば初心者でも簡単に育てて、スミレに似た花を楽しむことができます。

また、耐影性が強い品種をキッチンなどで栽培していると虫取りにもなって一石二鳥です。部屋の中を綺麗に保ってくれる効果にも期待できるのは、食虫植物ならではの楽しみ方とも言えます。ムシトリスミレを美しく育て食虫植物の特性をフル活用しましょう!

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