カレックスという、丈夫で寄せ植えなどに便利な植物があるのですが、見た目が地味なためあまり世に知られていません。
そんなカレックスの育て方や増やし方など、詳しくご紹介します。カレックスを自宅で寄せ植え用に自分で育ててみましょう!
丈夫な植物カレックスの基本情報
【学名】Carex
【和名】スゲ
【科名】カヤツリグサ科
【属名】スゲ属(カレックス属)
【原産国】世界各地
【草丈】20cm~100cm
【日照】日なた~日陰
カレックスの特徴
カレックスは全世界に2000種以上も分布するカヤツリグサ科スゲ属(カレックス属)の植物で、アフリカのサハラ砂漠以南の熱帯低地等一部地域以外のすべての陸地に生息しています。
2000種以上という非常に多くの種をもつカレックスですが、その多くは東アジアと北アメリカに分布しており、日本には約210種が自生しています。
スゲというと、道端の雑草であるカンスゲ(Carex morrowii)やアゼスゲ(C. thunbergii)等をイメージしてしまいますが、園芸用として作り出されたカレックスは、斑入りなど美しい葉を持っています。
園芸用カレックスは、その美しい葉で他の草花の引き立て役や、カレックスそのものの存在感ある草姿を主役として、庭のボリュームアップに用いるなど、最近、急速に人気が出ているグラス類になります。
このように石と石の間、壁の脇などに植えてボリュームアップできるのがカレックスの魅力の一つです。
カレックスは多くの種が分類されており、その姿や色も実にさまざまです。縞斑が葉に入るものや、銅葉、黄金葉、赤葉などの葉色があり、草丈も大きなものになると1m近くになる種もあります。
あまりにも種が多く、姿形が似ているものも多いため、はっきりとした種が判別できないこともあるようです。
細長い根出葉をまとめて数多く出し、株立ちします。開花期になると、葉の間から花茎をのばして、棒状や球形の小穂を出しますが、ごく一部の小穂を観賞する種を除き、これらはあまり見栄えがするようなものではありません。
丈夫で、病害虫の心配もほとんどなく、放っておいてもよく茂り、常緑で冬を越す、園芸初心者でも大変育てやすい植物です。
カレックスの花の特徴
カレックスはカラーリーフプランツとして、その葉の色が美しいため広く愛されている植物ですが、花はあまり愛されていません。
花色は白や赤みがかった茶色なのですが、かなり地味で、言われなければ花だとわかりません。カレックスは花よりも葉の色に観賞価値のある植物ですが、それでも花が咲くと嬉しいものなので、栽培する場合は、どちらも楽しみたいものです。
このように花らしくない地味な花が、カレックスの花のほぼ全てなのですが、ごく稀に違うものもあります。
このように星形の変わった形をした花が咲くカレックスもあるのです。こういったカレックスは、花が咲くのも楽しみになりそうです。
カレックスは2000種類以上!
カレックスは全世界に2000種以上も種がある大きな属の植物です。非常に強靭な植物なので、途中で枯れたり途切れることなく、そこまで広範囲に広まったのだと考えられています。
ただ日本で販売されているカレックスは、大体の品種があります。白の斑模様の葉を持つシマカンスゲか、黄斑模様のエバーゴールドという品種が日本で流通している2大品種となります。
園芸品種でカレックスを購入しようとすると、だいたいはこの2品種の内のどちらかになるはずです。
なお、どこででも見かけるし、どこででも自生できそうなイメージのあるカレックスですが、中には絶滅危惧種になっているカレックスの品種もあります。
おすすめの2種類
シマカンスゲ【白斑入り】
日本に自生するカンスゲの園芸用品種で、やや厚めの葉に白い斑が入ります。カレックスの中では最も普及している品種になります。
エバーゴールド【黄色斑入り】
伊豆大島で発見されたカンスゲの園芸用品種で、葉に黄色の斑が入り、ベアグラスとも呼ばれています。切り取った葉が細く丸めやすいため、フラワーアレンジメントのアクセントとしてよく利用されています。
カレックスの育て方
育て方①環境
非常に強い植物なので、多くの品種は日なたでも日陰でも育ちますが、上記の「おすすめの2種類」で紹介した品種のように、葉に白い斑の入っている品種は、強い日差しにさらされると葉が傷んでしまうので、半日陰で管理します。
逆に、銅葉や黄色葉の品種は日に当ててやらないと、葉色が悪くなるので、日当たりの良い場所で管理します。特に銅葉は日陰で育てると、本来の美しい銅色になりませんので、かならず日なたで育てるようにします。
ちなみに日向でしっかりと陽の光を浴びて育つと、こんなにきれいな銅色の葉を茂らせます。枯れてません。これがきれいな銅色のカレックスです。
育て方②用土
カレックスの多くは庭に直植えで栽培します。そのまま植えてしまっても、強い植物なので問題なく育ちますが、もしも用意が出来るのであれば、少しだけ腐葉土を混ぜ込んでやって、環境を整えます。
腐葉土はカレックスを植える2週間前くらいに、植える予定の場所の用土に混ぜ込んで馴染ませておきます。その後カレックスを植え付ければ、すんなりと根付いてくれます。
育て方③植え付け
カレックスは3月から4月上旬に新しい葉を伸ばそうとしますので、その時が植え付けの適期になります。
庭に直植えの場合は、上記のように腐葉土を混ぜ、水はけのいい環境を整えておきます。さらに原肥として緩効性化成肥料も混ぜ込んでおけば完璧です。
また植え付けの際、株と株の間は30cmから50cmは開けておきます。カレックスはそれなりに大きく成長する植物ですので、間隔が狭いと株と株がぶつかってしまいます。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土か、赤玉土(小粒)7:腐葉土3の一般的な配合土に緩効性化成肥料を混ぜ込んだ用土を鉢に入れて植え付けます。あまり土にこだわらなくても育つ品種なので、用土の比率はきっちりにする必要はありません。適当で大丈夫です。
鉢植えの場合も、最初から少し大きめの鉢に植え付けて、そこから少しずつ大きな鉢に植え直してボリュームアップしていきます。
育て方④水やり
庭に直植えした場合、カレックスが根付くまでは水をやりますが、根付いてしまえば、水やりの必要はほとんどありません。雨水だけで、ぐんぐんと育っていきます。夏場に長く雨が降らず、土の乾燥がひどいようなら、水やりをしましょう。
鉢植えの場合は、根が張りすぎると土が乾きやすくなります。極度な乾燥には注意して、鉢土が乾いたらたっぷりと水やりをします。乾燥しすぎると葉先から傷んできますので注意深く観察してください。
育て方⑤肥料
カレックスは基本的に追肥の必要がありません。暖行性化成肥料を植え付けの時に、用土に混ぜ込んでおけば、後は水だけで育ちます。
ただ、小苗の成長速度を早くしたい場合は、春から秋に液体肥料を与えるか、春に置き肥をしてやると、成長が早くなります。成長速度を見ながら追肥をすればいいかと思いますが、急いで大きくする必要がないのなら、肥料は不要です。
カレックスの手入れ
手入れ①植え替え
鉢植えで育てている場合、根詰まりを起こしているようなら植え替えを行います。一回り大きな鉢に植え替えるか、株分けをして、一鉢に植えられている株の数を減らします。株分けして余った株は、他の鉢に植えれば増えますし、寄せ植えの花材にもできます。
庭に直植えの場合は、植え替えの必要はありません。
手入れ②剪定
カレックスは冬になったら、株元から5cm程度のところで剪定をします。剪定を行わないと、中心部が枯れてしまうからです。
株元から5cmの所で剪定してしまうと、最初は、かなり寂しい見た目になりますが、すぐに成長して元に戻りますので心配はいりません。
剪定後はまるで刈り取った後の稲のように見えますが、剪定も大事なケアの一つだと思ってください。
また、3月頃に刈り込みを行うと、株の中心部まで陽の光が差し込み、春以降の活動開始時に、美しい葉をつけさせることができます。
また草丈を抑えて、グランドカバーのように扱いたい場合は、適宜刈り込みを行うことでグランドカバーとしての利用が可能になります。
なお、刈り込みで刈り込んだカレックスを使ってしめ縄を作っている方がいらっしゃいました。これならリースも同じように作れそうです。
こちらは刈り込んだものの再利用ではありませんが、フラワーアレンジメントにもカレックスは大人気です。刈り込み後のカレックスの再利用で、簡単フラワーアレンジメントに挑戦するのも良さそうです。
刈り込みしたものも有効利用できるカレックスは本当に優秀な植物です。
手入れ③先祖返りの緑葉の処理
斑模様入りのカレックスは、園芸用に品種改良した品種のため、時々、斑の入っていない緑の葉に先祖返りする場合があります。
緑葉が出てしまった場合、緑葉の出た株の株分けを行い、緑葉が出た株は処分してしまいます。緑葉の方が原種に近く繁殖力が強いので、放っておくと緑葉だらけになってしまうからです。
カレックスの増やし方
増やし方①種まき
9月から10月上旬か、3月下旬から5月上旬に種をまくと2週間から3週間で発芽します。カレックスは光発芽種子なので、覆土はできるかぎり薄くします。
ただし、園芸用に品種改良された斑模様入りのカレックスは、種まきで増やそうとすると先祖がえりを起こしてしまい、斑が消えてしまうことが多々ありますので、株分けで増やすようにします。
増やし方②株分け
カレックスを株分けで増やすなら、植え付けと同じく、新しい葉を伸ばそうとする春に株分けするようにします。取り出した株をはさみで二つに分け、ちょうど良い鉢や、庭の他の増やしたい場所に植えます。
これだけで株分け終了です。後は鉢植えなら水をやりながら、庭植えならそのまま放っておけば、また元気に成長を始めます。
なお、庭植えの場合も、根が土と馴染み根付くまでは水を与えてください。
カレックスは寄せ植えにおすすめ
カレックスは、とても寄せ植えにおすすめな植物です。葉の色を一緒に植える植物の引き立て役にしたり、二種類の花の間に入れてバランスを取ったりと、カレックスの葉姿と葉色だからこそできることが、たくさんあります。
カレックスだけ植えても楽しめますが、慣れてきたなら、ぜひ寄せ植えにチャレンジしてみてください。きっとカレックスがなくてはならない花材になるはずです。
一つ上の寄せ植えはカレックスの横幅を生かしたものでしたが、こちらは高さを生かした寄せ植えです。花丈の低い花を、草丈の高いカレックスの周りに植えるというのも、寄せ植えでよくみる手法です。
こうやって植えることで空間が感じられ、寄せ植えに動きが出てきます。生け花の理屈と同じです。
空間を感じさせる寄せ植えという点では上記の植え方と同じで、こちらはシンボルツリーの高さを際立たせるために、根元にカレックスやカラーリーフ類が植えられています。
常緑のカレックスやカラーリーフ類は、一年中青々とした美しさで庭を元気に彩ってくれます。
上記で記した「常緑」という強みを生かし、こういった緑ばかりを寄せ植えするのもステキなアイデアです。緑と一言で言っても、少しずつ違う色味なのが良くわかる寄せ植えです。
緑は目の疲れを癒すのに有効と言われていますので、PC仕事やゲーム疲れの目を癒すためにも良い寄せ植えかもしれません。
カレックスのふさふさ感をうまく利用すると、ハンギングで、こんなにかわいらしい寄せ植えが可能になります。
カレックスは草丈がありますが、品種によっては葉が柔らかいので、ツル性の植物のように、葉が下に向かって垂れ下がり、まるでハンギングポットを覆うように葉が伸びていきます。
また、少々変わった寄せ植えとしては、「猫のサラダバー寄せ植え」があります。実はカレックスは猫草という猫が食べる草の代わりになります。
カレックス以外にもイネ科、カヤツリグサ科、笹の類は、たいがい猫が食べられるそうですので、それらを寄せ植えして、猫のサラダバー化すれば、市販の猫草を買ってくるより、よっぽどコスパが良くなります。
カレックスは多年草ですし、丈夫でどんどん増えますので、まさしく永久猫サラダバーになります。
暑さ・寒さに強いカレックスを育てよう
カレックスの特徴ともいえる、その頑丈さは、園芸初心者には大変ありがたい特徴です。放っておけば育ちますし、枯れることもまずありません。
暑さ・寒さにも強いので、日本のように四季があって一年の中で寒暖差があるような地域でも、特に対策を取る必要もないのはありがたい限りです。
ガーデニングをする際、手間のかかる植物ばかり植えてしまうと後の手入れが大変になりますが、バランス良くカレックスのような手入れの必要ない植物を植えておくと、庭のボリュームアップと共に、後の手入れがとても楽になります。
加えてカレックスを育てておけば、寄せ植えをすることになった際に、「この隙間を埋めたい」となっても、頭を悩ます必要がありません。隙間埋めや表土隠しに大活躍してくれます。
増えすぎが困るようなら鉢植えにすれば増えすぎることもありません。ぜひ自宅で1株だけでも育ててみてください。